2010年12月6日月曜日
2010年8月2日月曜日
顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:産前産後休暇
今日は、産前産後休暇についてです。最高裁は、支給対象期間の出勤率が90%以上という賞与の支給対象者の条件について、出勤率の算定にあたって産休・育児の勤務短縮時間分を欠勤とみなす措置を違法と判断しました。以下、判決文の引用です。
本件90%条項は,労働基準法65条で認められた産前産後休業を取る権利及び育児休業法10条を受けて育児休職規程で定められた勤務時間の短縮措置を請求し得る法的利益に基づく不就労を含めて出勤率を算定するものであるが,上述のような労働基準法65条及び育児休業法10条の趣旨に照らすと,これにより上記権利等の行使を抑制し,ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り,公序に反するものとして無効となると解するのが相当である。
本件90%条項の制度の下では,勤務を継続しながら出産し,又は育児のための勤務時間短縮措置を請求することを差し控えようとする機運を生じさせるものと考えられ,上記権利等の行使に対する事実上の抑止力は相当強いものとみるのが相当である。そうすると,本件90%条項のうち,出勤すべき日数に産前産後休業の日数を算入し,出勤した日数に産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分を含めないものとしている部分は,上記権利等の行使を抑制し,労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであるから,公序に反し無効であるというべきである。
会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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2010年7月30日金曜日
個人情報の適正な取扱いを確保するために労働組合が講ずべき措置に関する指針
今回は、個人情報の適正な取扱いを確保するために労働組合が講ずべき措置に関する指針の内容を、以下のとおり紹介します。
第 一 目的
この指針は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いの確保に関して労働組合が講ずべき措置について指針となる事項を定めることにより、労働組合が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図ることを目的とする。
第 二 定義 一 この指針において使用する用語は、個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)第二条において使用する用語の例による。
二 この指針において「労働組合」とは、個人情報取扱事業者のうち、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二条に規定する労働組合(船員のみに係るものを除く。)をいう(第四に規定する場合を除く。)。
第 三 労働組合が講ずべき措置について指針となる事項 一 法第十五条に規定する利用目的の特定に関する事項
労働組合は、個人情報の利用の目的(以下「利用目的」という。)を特定するに当たっては、当該個人情報の供される活動、目的等が一般的かつ合理的に想定できる程度に明確に行うものとすること。
二 法第十六条に規定する利用目的による制限に関する事項 (一) 労働組合は、法第十六条第一項及び第二項の本人の同意として、書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録(以下「電磁的記録」という。)を含む。)又は口頭による明示的な同意の意思表示を得ることが望ましいものであること。
(二) 労働組合は、その活動の遂行に必要な場合に限り、個人情報を取得するものとすること。
(三) 労働組合は、その取り扱う個人データについて、利用目的の達成に必要な範囲内で保存期間を定め、当該保存期間経過後又は利用目的を達成した後は、遅滞なくこれを消去することが望ましいものであること。
三 法第十八条に規定する取得に際しての利用目的の通知等に関する事項 労働組合は、法第十八条第一項及び第三項の本人への通知をするに当たっては、書面(電磁的記録を含む。)又は口頭により行うものとし、公表をするに当たっては、労働組合の事務所における書面の掲示若しくは備付け又はホームページ上での掲載その他の方法により継続的に行うことが望ましいものであること。
四 法第二十条に規定する安全管理措置に関する事項 (一) 労働組合は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損(以下「漏えい等」という。)の防止その他の個人データの安全管理のため、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講ずるものとすること。その際、個人データの漏えい等の事故が発生した場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、必要かつ適切な措置を講ずるものとすること。
(二) 労働組合は、組織的安全管理のために次に掲げる事項について措置を講ずることが望ましいものであること。 イ 個人情報保護管理者の設置
ロ 個人データの安全管理措置を講ずるための組織体制の整備
ハ 個人データの安全管理措置を定める規程等の整備と規程等に従った運用
ニ 個人データ取扱台帳の整備
ホ 個人データの安全管理措置の評価、見直し及び改善
ヘ 事故又は違反への対処についての手続の策定
(三) 労働組合は、人的安全管理のために次に掲げる事項について措置を講ずることが望ましいものであること。 イ 雇用契約時及び委託契約時における非開示契約の締結
ロ 従業者に対する教育及び啓発の実施
(四) 労働組合は、物理的安全管理のために次に掲げる事項について措置を講ずることが望ましいものであること。 イ 入退館(室)管理の実施
ロ 盗難等に対する対策
ハ 機器、装置等の物理的な保護
(五) 労働組合は、電子計算機を用いて個人データを取り扱う場合は、技術的安全管理のために次に掲げる事項について措置を講ずることが望ましいものであること。 イ 個人データへのアクセスにおける識別と認証
ロ 個人データへのアクセス制御
ハ 個人データへのアクセス権限の管理
ニ 個人データのアクセスの記録
ホ 個人データを取り扱う情報システムに対する不正ソフトウェア対策
ヘ 個人データの移送・通信時の対策
ト 個人データを取り扱う情報システムの動作確認時の対策
チ 個人データを取り扱う情報システムの監視
五 法第二十二条に規定する委託先の監督に関する事項 (一) 労働組合は、個人情報の保護について十分な措置を講じている者を委託先として選定するための基準を設けることが望ましいものであること。
(二) 労働組合は、次に掲げる事項について、委託契約時に委託の内容に応じて明確化することが望ましいものであること。 イ 個人データの安全管理に関する事項で、例えば次に掲げるもの (イ) 個人データの漏えい等の防止及び盗用の禁止に関する事項
(ロ) 委託契約範囲外の加工及び利用の禁止
(ハ) 委託契約範囲外の複写及び複製の禁止
(ニ) 委託契約期間
(ホ) 委託契約終了後の個人データの返還、消去及び破棄に関する事項
ロ 個人データの取扱いの再委託を行うに当たっての委託元への報告とその方法
ハ 個人データの取扱状況に関する委託者への報告の内容及び頻度
ニ 委託契約の内容及び期間が遵守されていることの確認
ホ 委託契約の内容及び期間が遵守されなかった場合の措置
ヘ 個人データの漏えい等の事故が発生した場合の報告・連絡に関する事項
ト 個人データの漏えい等の事故が発生した場合における委託元と委託先の責任の範囲
六 法第二十三条に規定する第三者提供の制限に関する事項 (一) 労働組合は、共済事業その他の活動の遂行に当たり、個人データを第三者に提供する場合には、法第二十三条第一項各号、第二項又は第四項各号に該当する場合を除き、あらかじめ本人の同意を得るものとすること。
(二) 労働組合は、法第二十三条第一項の本人の同意として、書面(電磁的記録を含む。)又は口頭による明示的な同意の意思表示を得ることが望ましいものであること。
(三) 労働組合は、法第二十三条第二項から第五項までの本人への通知をするに当たっては、書面(電磁的記録を含む。)又は口頭により行うものとし、本人が容易に知り得る状態に置く措置を講ずるに当たっては、労働組合の事務所における書面の掲示若しくは備付け又はホームページ上での掲載その他の方法により継続的に行うものとすること。
七 法第二十四条に規定する保有個人データに関する事項の公表等に関する事項
労働組合は、法第二十四条第一項の本人の知り得る状態に置く措置を講ずるに当たっては、労働組合の事務所における書面の掲示若しくは備付け又はホームページ上での掲載その他の方法により継続的に行うものとすること。
八 法第二十五条に規定する開示に関する事項
労働組合は、法第二十五条第一項の規定により求められた保有個人データの全部又は一部について開示しない旨の決定を本人に通知する際には、根拠となる法の規定(当該保有個人データの全部又は一部について開示しないことの根拠となる法第二十五条第一項各号のうち該当するものをいう。)を併せて通知することが望ましいものであること。
九 労働組合の個人情報保護に関する考え方や方針の明確化に関する事項 (一) 労働組合は、労働組合の個人情報の保護に関する方針等に関する宣言を定め、公表することが望ましいものであること。
(二) 労働組合は、(一)の宣言に、次に掲げる事項を定めることが望ましいものであること。 イ 取得した個人情報を目的外に利用しないこと。
ロ 苦情処理に適切に取り組むこと。
(三) 労働組合は、(一)の公表をするに当たっては、労働組合の事務所における書面の掲示若しくは備付け又はホームページ上での掲載その他の方法により継続的に行うことが望ましいものであること。
十 個人情報の漏えい等の事案が発生した場合の対応に関する事項 (一) 労働組合は、自己の取り扱う個人情報(委託を受けた者が取り扱うものを含む。以下この項において同じ。)の漏えい等の事実を把握した場合は、当該漏えい等に係る個人情報の内容を本人に速やかに通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くものとすること。
(二) 労働組合は、自己の取り扱う個人情報の漏えい等の事実を把握した場合は、遅滞なく、二次被害の防止、類似事案の発生回避等の観点から、可能な限り事実関係、発生原因及び対応策を公表するものとすること。
(三) 労働組合は、自己の取り扱う個人情報の漏えい等の事実を把握した場合は、事実関係、発生原因及び対応策を厚生労働省に直ちに報告するものとすること。
第 四 個人情報取扱事業者以外の労働組合による個人情報の取扱い
個人情報取扱事業者以外の労働組合法第二条に規定する労働組合(船員のみに係るものを除く。)であって、個人情報を取り扱うものは、法及び第三の規定に準じて、個人情報を適正に取り扱うことが望ましいものであること。
ご不明な点がありましたら、御社の顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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2010年6月4日金曜日
顧問弁護士・法律顧問が扱う問題:長期間経過後の懲戒処分
今回は、長期間経過後の懲戒処分についてです。
長期間経過後の懲戒処分について、最高裁(ネスレ日本事件。従業員が職場で上司に対する暴行事件を起こしたことなどが就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして暴行事件から7年以上経過した後に諭旨退職処分が行われた事案)において、以下のように判断しました。
「使用者の懲戒権の行使は,企業秩序維持の観点から労働契約関係に基づく使用者の権能として行われるものであるが,就業規則所定の懲戒事由に該当する事実が存在する場合であっても,当該具体的事情の下において,それが客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当なものとして是認することができないときには,権利の濫用として無効になると解するのが相当である。 」
引き続き、本件へのあてはめとして、以下のように判断しました。
「本件諭旨退職処分は本件各事件から7年以上が経過した後にされたものであるところ,被上告人においては,A課長代理が10月26日事件及び2月10日事件について警察及び検察庁に被害届や告訴状を提出していたことからこれらの捜査の結果を待って処分を検討することとしたというのである。しかしながら,本件各事件は職場で就業時間中に管理職に対して行われた暴行事件であり,被害者である管理職以外にも目撃者が存在したのであるから,上記の捜査の結果を待たずとも被上告人において上告人らに対する処分を決めることは十分に可能であったものと考えられ,本件において上記のように長期間にわたって懲戒権の行使を留保する合理的な理由は見いだし難い。しかも,使用者が従業員の非違行為について捜査の結果を待ってその処分を検討することとした場合においてその捜査の結果が不起訴処分となったときには,使用者においても懲戒解雇処分のような重い懲戒処分は行わないこととするのが通常の対応と考えられるところ,上記の捜査の結果が不起訴処分となったにもかかわらず,被上告人が上告人らに対し実質的には懲戒解雇処分に等しい本件諭旨退職処分のような重い懲戒処分を行うことは,その対応に一貫性を欠くものといわざるを得ない。
また,本件諭旨退職処分は本件各事件以外の事実も処分理由とされているが,本件各事件以外の事実は,平成11年10月12日のA課長代理に対する暴言,業務妨害等の行為を除き,いずれも同7年7月24日以前の行為であり,仮にこれらの事実が存在するとしても,その事実があったとされる日から本件諭旨退職処分がされるまでに長期間が経過していることは本件各事件の場合と同様である。同11年10月12日のA課長代理に対する暴言,業務妨害等の行為については,被上告人の主張によれば,同日,A課長代理がE社からの来訪者2名を案内し,霞ヶ浦工場の工場設備を説明していたところ,上告人X2が「こら,A,おい,A,でたらめA,あほんだらA。」などと大声で暴言を浴びせてA課長代理の業務を妨害し,上告人X1においてもA課長代理に対し同様の暴言を浴びせるなどしてその業務を妨害したというものであって,仮にそのような事実が存在するとしても,その一事をもって諭旨退職処分に値する行為とは直ちにいい難いものであるだけではなく,その暴言,業務妨害等の行為があったとされる日から本件諭旨退職処分がされるまでには18か月以上が経過しているのである。これらのことからすると,本件各事件以降期間の経過とともに職場における秩序は徐々に回復したことがうかがえ,少なくとも本件諭旨退職処分がされた時点においては,企業秩序維持の観点から上告人らに対し懲戒解雇処分ないし諭旨退職処分のような重い懲戒処分を行うことを必要とするような状況にはなかったものということができる。」
「以上の諸点にかんがみると,本件各事件から7年以上経過した後にされた本件諭旨退職処分は,原審が事実を確定していない本件各事件以外の懲戒解雇事由について被上告人が主張するとおりの事実が存在すると仮定しても,処分時点において企業秩序維持の観点からそのような重い懲戒処分を必要とする客観的に合理的な理由を欠くものといわざるを得ず,社会通念上相当なものとして是認することはできない。そうすると,本件諭旨退職処分は権利の濫用として無効というべきであり,本件諭旨退職処分による懲戒解雇はその効力を生じないというべきである。」
ご不明なことがあれば、貴社の顧問弁護士にご相談ください。なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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2010年5月11日火曜日
顧問弁護士(法律顧問)の検討
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2010年4月20日火曜日
個人情報関連
このブログでは、企業の顧問弁護士をしている者の立場から、日々接している法律問題のうち、一般的な情報として役に立ちそうなものをメモしています。ジャンルは幅広く扱っていますが、近時、未払いの残業代の問題などの労務問題が増えているので、そのような傾向を反映した形でのテーマのバラつきはあるかもしれません。
今日のテーマは、従業者の監督と個人情報保護についてです。労務問題(残業代問題、サービス残業など)が生じたときに関連して問題になることが多いテーマです。
「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」に則って解説します。
個人情報保護法第21条は、「個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。」と規定しています。
また、個人情報取扱事業者は、原則して、法第20条に基づく安全管理措置を遵守させるよう、従業者に対し必要かつ適切な監督をしなければなりません。その際、本人の個人データが漏えい、滅失又はき損等をした場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、事業の性質及び個人データの取扱状況等に起因するリスクに応じ、必要かつ適切な措置を講じる必要があります。
なお、ここに「従業者」とは、個人情報取扱事業者の組織内にあって直接間接に事業者の指揮監督を受けて事業者の業務に従事している者をいい、雇用関係にある従業員(正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員等)のみならず、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員等も含まれます。
【従業者に対して必要かつ適切な監督を行っていない場合の例】
事例1)従業者が、個人データの安全管理措置を定める規程等に従って業務を行っていることを、あらかじめ定めた間隔で定期的に確認せず、結果、個人データが漏えいした場合
事例2)内部規程等に違反して個人データが入ったノート型パソコン又は可搬型外部記録媒体を繰り返し持ち出されていたにもかかわらず、その行為を放置した結果、紛失し、個人データが漏えいした場合
【従業者のモニタリングを実施する上での留意点】
個人データの取扱いに関する従業者及び委託先の監督、その他安全管理措置の一環として従業者を対象とするビデオ及びオンラインによるモニタリング(以下「モニタリング」という。)を実施する場合は、次の点に留意してください。
その際、雇用管理に関する個人情報の取扱いに関する重要事項を定めるときは、あらかじめ労働組合等に通知し、必要に応じて、協議を行うことが望ましいといえます。また、その重要事項を定めたときは、労働者等に周知することが望ましいといえます。
・モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること。
・モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
・モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし、事前に社内に徹底すること。
・モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査又は確認を行うこと。
以上につき、ご不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にご確認ください。 その他、法律問題でお悩みの方は弁護士にお問い合わせください。 なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
2010年3月3日水曜日
顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマ:労働者の人格権
今回は、労働者の人格権についてです。
労働者の人格権の尊重について、最高裁(関西電力事件)は、以下のように判断しています。
「上告人は、被上告人らにおいて現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあるとは認められないにもかかわらず、被上告人らが共産党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外で被上告人らを継続的に監視する態勢を採った上、被上告人らが極左分子であるとか、上告人の経営方針に非協力的な者であるなどとその思想を非難して、被上告人らとの接触、交際をしないよう他の従業員に働き掛け、種々の方法を用いて被上告人らを職場で孤立させるなどしたというのであり、更にその過程の中で、被上告人M1及び同M2については、退社後同人らを尾行したりし、特に被上告人M2については、ロッカーを無断で開けて私物である「民青手帳」を写真に撮影したりしたというのである。そうであれば、これらの行為は、被上告人らの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、被上告人M2らに対する行為はそのプライバシーを侵害するものでもあって、同人らの人格的利益を侵害するものというべく、これら一連の行為が上告人の会社としての方針に基づいて行われたというのであるから、それらは、それぞれ上告人の各被上告人らに対する不法行為を構成するものといわざるを得ない。 」
この判例のように、会社の行為が不法行為を構成することがありますので、ご注意ください。 ご不明な点は、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。 なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代不払い、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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2010年2月20日土曜日
残業代請求に関して知っておくべきこと
今回のテーマは、残業代請求についてです。
会社が残業代を払わない場合、その会社に対しては付加金というとても大きなペナルティが科せられます。
付加金は、裁判所を使って未払い残業代の請求をするときに、未払いの額と同じだけの額を請求できるというものです。つまり、請求額が2倍になるということです!
しかも、付加金には、それが認められた日(=判決が確定した日)から年利率5%の遅延損害金(支払いが遅れたことにより余分にもらえるお金)が加算されます。
そうすると、会社側としても、未払い残業代のみならず、付加金まで支払わされるのを避けるため、裁判は避けたいと考えるのが自然でしょう。ですから、裁判をする前に、会社が任意で未払い残業代を支払うことを期待できるのです。
さらにすごいことに、未払い残業代というのは、不払いのときから、年利率6%の遅延損害金を請求することができるのです!この低金利の時代、6%の利率は非常に高いといえます。
さらに、その従業員が会社を退職した以降は、年利14.6パーセントの遅延損害金を請求できるのです(賃金の支払の確保等に関する法律第6条)。
これら全てを合計すると、請求額が、未払い残業代の何倍にもなることがあります。
ただ、残業代は過去2年までしかさかのぼって請求できませんので、ご注意ください。
注意すべき点としては、従業員の立場で会社と交渉したとしても、言葉は悪いですが、ナメられて相手にされないという事態も容易に想像できますので、確実に残業代を会社に払ってもらうためには、専門家に相談するべきでしょう。
そう意味で、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
また、企業側の方で、残業代についてご不明な点があれば、顧問弁護士(法律顧問)に相談すると良いと思います。
なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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2010年1月25日月曜日
顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:製造物責任法
今回は、製造物責任法についてです。
製造物責任法は、製造物の欠陥により損害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任について定めた法規です。製造物責任という用語に相当する英語の product liability (PL)から、PL法と呼ばれることもあります。条文は以下のとおりです。
(目的)
第一条 この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
(免責事由)
第四条 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
(期間の制限)
第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したときも、同様とする。
2 前項後段の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。
(民法 の適用)
第六条 製造物の欠陥による製造業者等の損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法 (明治二十九年法律第八十九号)の規定による。
ご不明な点は、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。
また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。
なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士ほか)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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