今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
オ 本件各雇用契約に基づく原告らの勤務形態には、本件ビルの防災センター裏にある仮眠室(以下「センター裏の部屋」という)で夜間の仮眠を取る勤務形態(以下「勤務A」という)と防災センターとは別の場所にある仮眠室(以下「本件別室」という)で夜間の仮眠を取る勤務形態(以下「勤務B」という)の二種類があり、その勤務時間は、勤務Aが別紙(略)表1、勤務Bが別紙(略)表2のとおりである(就業規則(書証略)三九条(4)(イ)の規定内容と「Mビル警備勤務シフト表(平日)」(書証略)とで、始業時刻等が異なるが、勤務の実態が書証(略)によることについて争いがないので、いずれの表も書証(略)に基づく)。
また、本件ビルにおける宿泊を伴う警備業務は、勤務Aの者と勤務Bの者の二人一組で行われていた(ほかに日中勤務の責任者が一名)。
(3)原告らの勤務の実績(書証略)
原告らの勤務実績は、別紙(略)表3のとおりである(書証(略)の各月の勤務割表の記載のうち各原告欄の上段「◎」印が付された日が宿直勤務、下段に「1」と記載された日が勤務A、「2」と記載された日が勤務Bである)。
3 争点
(1)宿直勤務の仮眠時間は労働時間に当たるか。
(2)勤務Bの宿直勤務の本件別室における仮眠時間は労働時間に当たるか。
(3)職務手当の支払が割増賃金(残業代)の一部弁済に当たるか。
(4)付加金請求の可否
第三 当事者の主張
1 原告らの主張
(1)仮眠時間が労働時間に含まれること(争点(1))
労働基準法(以下「労基法」という)上の労働時間とは、労働者が使用者の拘束下にある時間のうち休憩時間を除く実労働時間である。労働時間に当たるか否かは、実作業から解放されているか、解放がどの程度保障されているか、場所的、時間的にどの程度解放されているかなどの実質的な観点により定まる。
原告らが宿直して本件ビルの警備業務に従事する場合、センター裏の部屋、本件別室(以下、併せて「本件各仮眠室」という)での待機は、その業務の履行として行われるもので、仮眠時間中であっても警報や電話等への対応が義務付けられているから、仮眠時間中であっても労働からの解放は保障されていない。
原告らは、勤務時間中は二四時間、本件ビルのマスターキーを携帯すること、事故、不審者侵入、不審物の発見、地震や火災などの非常事態に対応すること、本件ビル内の会議室等の解錠依頼などに応じることを義務付けられていた。非常事態以外であっても、被告からは、常に勤務時間として緊張感を持続させること、本件別室でも制服を着用するよう指導されていたとともに、被告の従業員の中には、実際に仮眠時間中に本件ビルのテナントの会社から執務室の解錠を依頼され対応したことがあり、これに関連して、その時に本件別室で待機していた原告Aにも仮眠時間中でも制服を着用するよう指導がされた。このように、仮眠時間中であっても原告らは、労働から解放されているとはいえない。
また、宿直業務中は、本件ビルからの外出を禁じられており、仮眠場所も本件各仮眠室に限定され、警報器等の警備設備から離れられないのだから、場所的制約も強い。
これらの事実に照らせば、仮眠時間は労働時間として取り扱われるべきである。
(2)本件別室での仮眠時間も労働時間に含まれること(争点(2))
本件別室における仮眠時間も(1)のとおり、外出禁止、仮眠場所の制約、仮眠時間中でも警報等への対応が義務付けられていることは、センター裏の部屋における仮眠時間と異ならない。また、センター裏の部屋に待機している者(勤務A)が、防災センターを離れる場合には(トイレに行く場合を含めて)、勤務Bの指定を受けている者が防災センターで待機することなどもあるのだから、本件別室における仮眠時間も労働時間に該当することに変わりはない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇、保険会社との交通事故の示談交渉、刑事事件や多重債務(借金)の返済、遺言・相続の問題、オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。