今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています。
第二 事案の概要等
1 本件は、宿直によりビル警備業務に従事する原告らが、宿泊時の仮眠時間を含めて時間外割増賃金(残業代)、深夜労働(残業)割増賃金(残業代)の支払を求めた事案である。
2 前提となる事実(争いのない事実及び後掲の証拠により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 被告は、ビルメンテナンス、警備業等を営む株式会社である。
イ 原告らは、いずれも被告と雇用契約(以下「本件各雇用契約」という)を結び、被告の従業員として、原告Aは平成一四年六月から、原告Bは平成一三年一一月一五日から、被告の指示に従い新宿区(以下略)に所在するMビル(以下「本件ビル」という)において、宿泊を伴う警備業務(以下「宿直業務」又は「宿直」という)に従事していた者である。
(2)本件各雇用契約の内容等
ア 本件各雇用契約に基づき原告らに支払われる賃金(月給)は、毎月一〇日締め同月二五日払いであり、通常の労働時間の賃金単価の計算の基礎となる月額は、以下のとおりである。
原告A 原告B
基本給 一四万二一八〇円 一三万六一八〇円
現場手当 二万円 二万円
職務手当 五〇〇〇円 五〇〇〇円
(合計) 一六万七一八〇円 一六万一一八〇円
イ 原告らの一か月当たりの所定労働時間数は一六三時間である。
ウ 本件各雇用契約に基づく時間外労働(残業)、時間外深夜労働(残業)の割増賃金(残業代)単価は、以下のとおりである(なお、時間外労働(残業)、深夜労働(残業)又はその双方に対して支払われるべき割増賃金(残業代)を併せて「割増賃金(残業代)」という。以下同じ)。
原告A 原告B
通常の労働時間の賃金単価 一〇二六円 九八九円
時間外労働(残業)割増賃金(残業代)単価 一二八二円 一二三六円
時間外深夜労働(残業)割増賃金(残業代)単価 一五三九円 一四八四円
(計算式、時間外労働(残業)割増賃金(残業代)単価、時間外深夜労働(残業)割増賃金(残業代)単価の順、一円未満切り上げ)
原告A 一二八二円=一六万七一八〇円÷一六三時間×一・二五
一五三九円=一六万七一八〇円÷一六三時間×一・五
原告B 一二三六円=一六万一一八〇円÷一六三時間×一・二五
一四八四円=一六万一一八〇円÷一六三時間×一・五
エ 原告らに対しては、給与規程四一条一項に基づき、夜勤手当が支払われ、時間外深夜労働(残業)割増賃金(残業代)(深夜時間外勤務手当(残業代)・給与規程三六条)、深夜労働(残業)割増賃金(残業代)(深夜勤務手当(残業代)・三九条)は支払われないこととされている(四一条二項)。そして、この夜勤手当は、所定労働時間内の深夜労働(残業)勤務割増賃金(残業代)の支払に充当される。
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