このブログでは、企業の顧問弁護士をしている者の立場から、日々接している法律問題のうち、一般的な情報として役に立ちそうなものをメモしています。ジャンルは幅広く扱っていますが、近時、未払いの残業代の問題などの労務問題が増えているので、そのような傾向を反映した形でのテーマのバラつきはあるかもしれません。
今日のテーマは、株主総会の運営についてです。
株主総会においては、総会の運営を円滑にさせるべく、従業員株主を参加させることが多い。では、会社が、従業員株主を別の入り口から先に入場させて会場の前方の席に座らせた場合に、希望する席に座れなかったほかの株主との関係で問題があるといえるでしょうか。
この点について、最高裁判例の中には、このような措置は適切ではないが、法的利益を侵害したとはいえないと判断したものがあります。以下は、その判決文の引用です。
株式会社は、同じ株主総会に出席する株主に対しては合理的な理由のない限り、同一の取扱いをすべきである。本件において、被上告会社が前記一の2のとおり本件株主総会前の原発反対派の動向から本件株主総会の議事進行の妨害等の事態が発生するおそれがあると考えたことについては、やむを得ない面もあったということができるが、そのおそれのあることをもって、被上告会社が従業員株主らを他の株主よりも先に会場に入場させて株主席の前方に着席させる措置を採ることの合理的な理由に当たるものと解することはできず、被上告会社の右措置は、適切なものではなかったといわざるを得ない。しかしながら、上告人高橋は、希望する席に座る機会を失ったとはいえ、本件株主総会において、会場の中央部付近に着席した上、現に議長からの指名を受けて動議を提出しているのであって、具体的に株主の権利の行使を妨げられたということはできず、被上告会社の本件株主総会に関する措置によって上告人高橋の法的利益が侵害されたということはできない。そうすると、被上告会社が不法行為の責任を負わないとした原審の判断は、是認することができ、原判決に所論の違法はない。
会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。
個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。
なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。
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